背景:「介護をしない介護」を追い求めて到達したおとなの学校 |
最近の介護事情は、食べられなくなったら胃ろうで栄養を補う、介護士は何度でもオムツ交換をして清潔を保つ。機械浴で全身をくまなく洗う。どれもが一見本人思いの丁寧なケアだという見方もあるけれど、全てお任せにして寝たきりになれば、本人は「出来ること」をどんどん奪われる。家族が家で支えるのは難しくなる。廃人同様の高齢者が増えれば、介護士は、食事、入浴、排泄介助の3大介護に追われ疲弊する。 |
理事長の大浦敬子さんは、「介護をしない介護」をひたすら追い求めてきた。高齢者が生きる喜びを取り戻し、出来るところは自ら動いて貰い、その人本来の暮らしに戻していく。誰もが死ぬまで「意欲」を持ち続けられる仕組みをつくり、幸せに年を取れる国にしなければ、この焦燥感が「おとなの学校」の実現に導いた。 |
問題解決のためのユニークな方法:過去の記憶に働きかける「回想法」を応用、学校方式のリハビリを創設 |
大浦さんは、過去の記憶に働きかける「回想法」を応用し、場の丸ごとを学校にして、そこにいるだけで高齢者がスイッチ・オンになる仕掛けを作り出した。30分の授業中だけでも、そこにいる人が「生きる喜び」を感じられる時間を作りたいと思ったのである。
「おとなの学校」に入って目に飛び込んでくるのは、黒板や時間割、時計。授業では鉛筆やプリントに触れ、チャイムが聞こえてきます。"学校の懐かしさ"を五感で感じられる作りになっているのです。
さらに、内装や家具の色調などお客さまを包む環境も意欲が向上するように考え抜かれています。
国語・算数:脳には“前頭前野”という人間らしさを司る部位があり、簡単な問題をスラスラと解くことにより、その機能性を高め、認知症の予防や進行を和らげる効果があるといわれています。お客様のレベルに応じた教材を使用し、1日の学習時間は20〜30分程度、内容は読み・書き、計算、数字盤の3つです。 |
体育:集団体操、各種運動機器を用いての機能訓練を中心に行っています。軽快な音楽に合わせ、気持ちよくリハビリを行えます。
音楽:音楽懐メロや唱歌、季節に合った曲などを歌ったり合奏したりと、とてもにぎやかに行っています。日頃無口な方も、この時間だけは自然と歌が飛び出してしまう事があるようです。
社会(回想法):懐かしい映像や題材をもとに、お元気だった頃を思い出していただく、とても人気の高い授業です。ここでは私たちスタッフではなく、お客様が先生です。
家庭科:家庭科簡単な調理等を行っています。特に女性のお客様には大人気で、「若い人には負けないわよ」と言わんばかりの活躍ぶりに、スタッフはあまり出る幕がありません。 |
収益モデルと組織形態:大人の学校はFCシステムで万全のサポート体制を創っている |
教育・研修制度:介護事業に新規参入される方でも、すぐに一定の「おとなの学校」レベルで事業を展開できるよう、十分な研修期間を用意しています。高齢者に自立を促す接し方や運営ノウハウなど、これまでの実績に基づいて作成されたマニュアルから学ぶことが出来る。
立地・物件選定アドバイス:いざ「おとなの学校」を作ろうといっても、立地条件や建物の構造などが学校に不向きな場合がある。そこで、「おとなの学校」の特性に合った物件選定についてのアドバイスが受けられる。また、行政への申請書の作成代行やスタッフの募集代行なども追加サポートとしてご相談に応じている。
独自のシステム環境:現状の介護現場では、書類作成や給付請求業務に時間を費やすことが多く、スタッフの業務負担がとても大きくなっている。独自で開発したシステム環境により、業務の軽減が図られている。また、「おとなの学校」各校が活発に意見を交換するためのネットワーク環境を整えている。 |
運営サポート:学校を"開校しても、お客さまの数がなかなか増えない"、"スタッフが定着しない"などの不安を抱える事が考えられる。こうした運営上の不安を解消するために"開校"後も、スタッフの継続的な教育から行政対応まで、様々なサポートや実践で培ってきたノウハウを提供するサービスを実施している。
また、状況に応じて営業の支援も別途行っている。
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達成した社会的な便益 |
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おとなの学校本校(老健施設)では、在宅復帰率が常に6割を超え、2割台の全国平均より3倍近くも高い。 |
革新的なビジネスモデルとFCによる充実したサポート体制 |
「回想法」を応用した、ユニークな脳リハビリ方法を開発し、高い在宅復帰率を実現してきた実績に基づき、充実したFCシステムにより全国展開を図っている。誰しもこれから高齢期を迎える人は、最後まで、いきいきと、意欲を持ち続け対との強い欲求を持っている。 |
残念ながら、多くの介護サービスが効率的な介護を目指す余り、高齢者が意欲を持てば継続できる能力を失わせる結果となっている。この大人の学校の生き方を支持する高齢者本人や家族のかたは多いのではないかと思う。このモデルが全国に広がり、その効果の測定も進むことが期待される。 |
Reference2:
古川雅子(2014)「大浦敬子:介護を大人のディズニーランドに」AERA 2014年12月8日号 |
このケーススタディーをお読みになった方はどなたでもこの社会企業モデルの評価に参加できます |
この社会企業を評価する |
自分のニーズに合っている |
みんなが役割を持って参加 |
制度のはざまをカバー |
ビジネスとして長続きするか |
他のまちにも応用可能か |
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