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フォーラム: 優良な社会企業 |
単身高齢者が若者と住宅をシェアすることにより社会とのつながりを取り戻す異世代ホームシェア |
Eメール: フランス NPO ネットワーク La PariSolidaire Paris | 係: | |
答: 近年、単身者たちの新たな居住スタイルとして、都心でのシェアハウスが急増している。ひとつの家屋(または棟)または居室を非縁 故関係の複数の人々が共有し生活する住まい方である。フランスでは、このようなルーム・シェアを利用し、持ち家を持つ単身のお年寄りが安い賃料、あるいはまったく無料で学生に対し部屋を貸し、その代わりに簡単な身の回りの世話や、安否確認を行ってもらう仕組みが法制化され、さらに、そのような共同居住のマッチングをするNGOも多数あらわれている。 | Hampstead Heath, London, in September | |
配置番号:あなたの投稿された質問と回答が何処に配置されるかを示すため、1から5まで(少数を含む)を指定してください。: 丁志映、2014、『世界の助け合いハウジングシステムから、近未来の日本社会を救う解決策を探ろう、フランス編:異世代ホームシェア』KENCHIKU TOKYO 2014 07、丁志映による講演は2015年9月8日に海老塚良吉氏主催による比較住宅住宅研究会で行われたものである | 地図: 2015-09-10 00:00:00 |
2003年の猛暑問題解決と若者の不安解消 | ||||||
このような共同居住が促進されたきっかけはフランスで2003年に起きた猛暑に伴う大量のお年寄りの死亡である。2003年の異常気象によって、フランスでは一人暮らしの高齢者を中心とした約1万5000人が熱射病と脱水症状のため亡くなった。高齢者の大部分が家族と連絡を取っておらず、誰にも助けを求めることができない状態であった。猛暑後、フラン ス社会で高齢者と家族のあり方が問われ、高齢者の孤独な住 まい方が主目を集めることになった。 | 一方で、パリ市やリヨン市などを中心とした大都心では若者や学生の数は増加しつつあるが、若者向けの住宅不足が深刻である。 フランスの学生は地方や外国からきて、大都市や 他国に住むことに対して学生自身とその両親も不安に思ってい る。そのために、両親も高齢者との同居をすすめる場合が多く、 学生が入居を決める前に高齢者宅を訪問する際に、両親も付 き添うことがある。その後、学生の親が同年代の高齢者大家と 親しくなり、頻繁に高齢者宅を訪れることもある。最終的にはや はり経済的な理由で高齢者との同居を選ぶ。異世代居住用の 住居は周辺の住宅に比べると圧倒的に家賃が安い。 以上のような、社会的な背景などにより高齢者の孤独死の 解消と若者に安価な住宅を提供するために、2004年以降、 NPO団体などを中心に異世代ホームシェアがフランス全土に 広まった。 | |||||
公営住宅でも若者への転貸が可能に | ||||||
フランスでは、高齢者の持ち家で若者が高齢者と一緒に暮らす「オーナーシップ型異世代ホームシェア」が主流である。 | しかし、2009年3月、公的住宅の規制緩和に関する法律「モール法(La10iMoIIe)」の制定により、公的住宅(HLM)に住む高齢者や障害者が空いている部屋を30歳以下の若者に転貸しやすくなった。この制度を利用して、一昨年から公的住宅タイプの異世代ホームシェアの事例が登場し始めており、同居者からの家賃収入がある一定額を超えなければ、税金が免除される制度である。 | |||||
マッチング組織の急拡大 | ||||||
フランスにおける異世代ホームシェアのマッチング組織は
フランス全土で、34団体ある。その中で、PariSoIidare
Parisを筆頭に同じような考えを持ったNPOが集まりCOSl
ネットワークを構築し、約20団体が各地域で行われる異世代
ホームシェアの状況を確認し合ったり、情報共有を行ってい
る。 またEnsemble2Generationsは、他の団体とは異なり 独自に設立し、活動を行っており独立したネットワークを同じ NPO内で構築している。そのうち、本稿では異世代ホームシェ アを積極的に手掛けているNPO6団体を中心に活動および 特徴などを述べる。 1.入居者の属性と条件 高齢者の募集対象年齢は、フランスにおける一般的な年金受給年齢の60歳以上が多いが、老人学での定義から50歳以上を高齢者扱いしているNPOもある。年齢以外、空き部屋があることに加えて部屋の数、共用空間の大きさなどの条件を充たす必要がある。他に、若者を助けたいというような心構えについても求められる場合がある。 一方で若者の募集対象は、主に学生である。学生が中心となる理由は、定住しないこと?高齢者に対する先入観が他の属性より比較的低いことが挙げられる。学生は就職などによって家を移動する可能性が高く家賃が安い場合でも、一つの家に長く居続けるという懸念がないからである。この考え方には国民の約7割がカトリック教徒であるフランスにおいて、家探しで困っている学生たちに平等にチャンスを与えたいという宗 教的意識が現れていると思われる。反面、日本の営利目的型シェアハウスの多くは、収入がほとんどない学生の入居を拒む傾向があり、一般的に1年以下の定期建物賃貸借契約を結んでいる。同じ短期間の居住目的でも正反対の考え方であろう。 NPO団体によっては、学生や失業者に関しては年齢制限を設けていないため、最高齢で54歳の学生を採用したところもある。 |
2.マッチングシステム 高齢者と学生のホームシェアのために、NPOのスタッフは、高齢者や学生に直接面会し、インタビューを通して双方のニーズや希望条件などを把握する。その後、候補者を決め対面する機会をつくる。契約の判断は、居住者同士が最終的に決める。NPOは、その際の関連書類の準備や手続きなどを手伝う。 3.アフターケア 異世代シェア同居が成立した場合、NPOは定期的に住宅訪問や、メールと電話などで居住者と連絡をとり、生活の中でミスマッチが生じていないかを確認する。加えて、異世代同居をする人々同士でパーティーやお茶話会などを開催することで高齢者同士や若者同士で情報交換を通し交流を深めているNPOもある。 | |||||
賃料は市価の半額から3分の1以下に | ||||||
契約方式は、各NPOによって2つまたは3つの段階に分けて
設定されている。これは、フランスが異世代居住のモデルにした
スペインの「無料住居」に、さらにフランスの社会的要求を加えた
【新たなシェア居住システム】である。このフランスの独自のシェ
アシステムは、高齢者の健康度合と一緒に過ごす時間によって
家賃が変化する仕組みになっている。 「無料住居」とは、夕食以降の毎晩を学生と高齢者がともに時間を過ごし、週末も学生が定期的な食事会家にいる場合は家賃が無料になる。 「経済的住居」は、学生が定期的に在宅し、買い物の手伝い、食事のシェア、郵便の受け取り、PC操作説明などの日常生活の手伝いをする。家賃は月80から120ユーロ。 「連帯住居」とは、自立している高齢者への付き添い、時間帯の制限は無い。学生はどんな手伝いをするかは、自由に決めることができる。契約期間に関しては、基本は1年(夏のバカンスを除く約10ケ月)契約が 中心となるが、半期間や研修期間など個別対応も可能である。家賃は月200から600ユーロ、で周辺の相場の半額から3分の1程度となっている。 |
活動費およびスタッフ数 活動費は、主に?居住者の年会費(30%〜50%)と?補助団体からの補助金(50%〜70%)によって構成されている。 パリ市、リヨン市などの自治体以外に、この事業に賛同する AG2R、ISICA、SNCF、EU、iCADEなどの共済組合、鉄道 会社、銀行などの幅広い団体から補助を受けている。また、居 住者が支払う費用は、登録手数料と年会費であり、年会費は 高齢者・若者共に選択した契約方式の種類によって払う費用 が異なる。スタッフ数は、平均2−3人程度である。 | |||||
活動費およびスタッフ数 | ||||||
84歳の高齢者(女性)と28歳の男子学生のシェア事例である。高齢者は寝たぎりになってホームシェアをやめようと思った時期もあったが、NPOと相談して継続する決心をした。若者が無料住居で契約しているために、居住者問のルールとして、2週末に1回は週末在宅をすること、21時以降は在宅すること、ご飯は一緒に食べることなどが設けられている。 て 高齢者は、学生が帰宅してただいま”と挨拶をしてくれることで社 会との繋が)を感じるし、自分の孫がいるみたいで喜びを感じている。学生は離れて暮らしている高齢者の家族とも信頼関係を構築している。 フランスの最初のインタビュー対象だった女性の高齢者から、白人で壁に話さなくなったo」と伺ったときの衝撃は今も忘れられない。何週間か前にみた日本のTVで、ある男性の高齢単身者から「壁と話している」との発言を聞いて二度目の衝撃を受けた。国や性別が異なっても、高齢者は同じことを感じていると。 高齢者が安心して暮らすために「情緒」「経済」「介護」が必 要だと言われている。異世代ホームシェアは、高齢者にとって話 し相手ができたり、寂しさの解消、いきがいに繋がったりと「情 緒」的側面に非常に効果がある。 |
特に、公的住宅の【サブレット型異世代ホームシェア】の場合は、年全収入以外の一部家賃収入があり「経済」的側面でも効果を期待できる。 また、高齢者が子どもと離れて暮らしていても若者が共に居住すること で、万が一何かあった際に連絡をしてもらうなどの「見守り」の ような効果が期待できる。 さらに、高齢者が所有または、利用している家の空いている部屋を利活用することで、地域に新しい世代が加わり、高齢化が進む地域の活性化にも寄与できる可能性がある。これは筆者らの実践例(地域活性型のホームシェア)でも実証されている。異世代ホームシェアは、高齢者が長く自宅に住み続けたいというニーズを満たすと同時に、日本の医 療・福祉政策において医療費の負担を減らすことにも寄与する と考えられる。 |
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